吹き抜けのあるリビングはおしゃれの象徴

注文住宅の間取りを考える際、ほとんどの方が一度は「吹き抜け」に憧れるのではないでしょうか?
Googleで「おしゃれなリビング」と検索しても、SNSで映える家の写真を見ても、「吹き抜け」はたびたび登場します。
それほど、吹き抜けは“おしゃれな間取り”の象徴になっている印象があります。

試しにAI(ChatGPT)に「おしゃれなリビングを作るコツは?」と聞いてみても…
- 視線の抜けを意識した間取り
- 奥行きを感じる設計
- 天井を高くすることで開放感アップ
といった回答が返ってきます。
つまり、。

これって全て吹き抜けの要素そのものですね!
「吹き抜け=おしゃれで開放的」というのは、ある種のセオリーのようになっています。
吹き抜けのメリットとは?

まず、吹き抜けの良さを正しく理解しておきましょう。
吹き抜けを採用した住宅でよく語られるメリットは以下の通りです。
- 圧倒的な開放感|縦方向への抜け感
- 採光性の高さ|高窓の活用による光の確保
- 家族の気配を感じやすい|上下でつながる安心感
- モデルハウスのような高級感|空間構成に与える影響
- SNS映え|周りに自慢できる“憧れの間取り”
圧倒的な解放感|縦方向への抜け感
吹き抜けの最大の特徴は、何といっても“天井の高さ”が生む開放感。一般的な住宅の天井高が2.4m〜2.5mであるのに対し、吹き抜けを採用すると空間高さは4m〜6m程度にもなります。
この縦方向への抜け感は、床面積以上に「広く感じる」心理的効果をもたらします。人間は「空間の広がり」よりも「高さ」に対して強い開放感を覚えると言われており、天井が高いことでストレス軽減や集中力の向上につながるという研究もあります。
また、空気がこもりにくく、夏場の熱気が上に逃げやすいというメリットも感じられる場面があるでしょう(※ただし、これは断熱・空調設計によって逆にデメリットにもなりえます)。
採光性の高さ|高窓の活用による光の確保
吹き抜けを設けることで、高い位置に窓(ハイサイドライト)を配置できるようになります。これにより、隣家や塀などの遮蔽物による影響を受けにくく、建物全体に自然光を取り込むことが可能になります。

とくに日本の都市部では敷地が狭く、1階の採光が十分に確保できないケースも多いため、吹き抜け+高窓の設計は“パッシブデザイン”の観点からも有効です。
高窓からの採光は、拡散光が空間全体に柔らかく届くため、直射日光による眩しさを避けつつ、室内の明るさを保ちやすいという利点もあります。また、電気照明への依存度が減ることで、日中のエネルギー消費を抑えた省エネ効果も期待できます。
家族の気配を感じやすい|上下でつながる安心感

吹き抜けは単なる空間デザイン以上に、「家族のつながり方」に影響を与える間取りです。上下階が視覚的・聴覚的にゆるやかにつながることで、互いの気配を感じやすくなります。
たとえば…
- 子どもが2階の自室にいても、リビングの声や物音が届く
- 家族が帰宅したことを上階にいても感じ取れる
- 小さな子どもを見守りながら家事ができる
こうした“心理的な安心感”は、特に子育て世帯や在宅勤務が増えている現代の暮らしにおいて、大きな価値のあるポイントです。
一方で、音が抜けすぎることでプライバシーが損なわれるリスクもあるため、「ちょうどよい距離感」を設計でどうつくるかが重要になります。
モデルハウスのような高級感|空間構成に与える影響

空間に高さが加わることで、視覚的に“格”が上がったように感じられるのも、吹き抜けの魅力のひとつです。
照明や梁(はり)の見せ方、階段との組み合わせによっては、まるでモデルハウスやデザイナーズ住宅のような演出が可能になります。高級ホテルやレストランなどでも採用されている「縦の広がり」は、日常に非日常感をもたらしてくれます。
また、インテリアの自由度も高く、たとえば…
- 大型のペンダントライトを吊るす
- 吹き抜け壁面にアートを飾る
- 吹き抜け沿いにスケルトン階段を設ける
など、設計・コーディネートの幅が広がる点も、住宅好きにはたまらないポイントです。

吹き抜けだからこそ出来る事も色々あるんですよね
SNS映え|周りに自慢できる“憧れの間取り”
InstagramやPinterest、ルームツアー系のYouTubeチャンネルなど、今や家づくりの情報源はSNSが中心。そうしたプラットフォームにおいて、吹き抜けリビングは“映える間取り”の代表格です。
- おしゃれな照明
- 無垢の梁と漆喰壁
- 大開口サッシや鉄骨階段
これらと吹き抜けを組み合わせた投稿は、フォロワーからの反響も大きく、「見た目の満足度」が非常に高い空間と言えるでしょう。
家づくりは“実用”と“演出”の両輪で成り立っています。私のように家づくりについて発信し、理想の暮らしを可視化したいと考える人にとって、吹き抜けは非常に魅力的な選択肢となるのは自然なことでした。
吹き抜けは「理想の暮らしの象徴」だった
このように、吹き抜けには単なる「おしゃれ」や「見た目」以上に、空間性・心理的快適性・採光設計といった多面的な魅力が備わっています。
だからこそ、私たちも最後まで「取り入れるかどうか」を真剣に悩みました。
しかし──
その理想を形にするには、「暮らしのリアル」とのバランスも不可欠でした。
次章では、私たちが後から後悔しないために最終的に吹き抜けを採用しなかった理由と、その判断に至るまでの過程を詳しくご紹介します。
後から後悔しないために吹き抜けを採用しなかった3つの理由
そんなに魅力的な吹き抜けですが、我が家では採用しませんでした。
むしろ、いろいろ調べて間取り検討を進めていく中で「うちには合わない」と確信したのです。
その理由は大きく分けて3つあります。
① 掃除やメンテナンスの手間が増える
よく言われることですが、吹き抜けをつくると高所の掃除や照明の交換が自力では難しくなります。
例えば、高窓に鳥のフンがついたり、吹き抜け天井の照明が切れたりした場合。
自分たちで掃除・交換はできず、業者に依頼する必要があるため、
長期的には維持管理コストが地味にかさむ点もデメリットです。
吹き抜けを採用するのであれば、将来的なメンテナンス性も必ず考慮すべきポイントだと感じました。
② 吹き抜けで2階の部屋数・採光計画に影響が出る
我が家では二階に、
- サブリビング
- 主寝室
- 子ども部屋(2部屋)
の合計4部屋を配置する必要があります。
そしてなるべくならすべての部屋に南面の窓を確保したいという希望がありました。
しかし吹き抜けを1階に設けると、その真上には部屋が作れません。
つまり、吹き抜けの分だけ2階の南面が削られてしまうんです。
その結果、「リビングの明るさを優先するか」「2階の各部屋の快適性を優先するか」のトレードオフが発生しました。
検討の末、家族のプライベート空間の明るさ・快適さを重視し、吹き抜けは採用しない判断をしました。
③ 音が筒抜けになるという致命的な問題

音問題。
これが我が家が吹き抜けをやめた最大の理由です。
吹き抜けのあるモデルハウスや実際のお宅を何件も見学しましたが…
1階の音が2階に筒抜けで驚いた、というのが正直な感想です。
とくに我が家の場合、
- 6人家族で生活リズムがバラバラ
- 義両親は夏場は朝4時から活動
- リビングにわんこのゲージを設置予定
という条件が重なり、音の問題は致命的でした。
夜中に犬が吠えたり、早朝に誰かが活動を始めたりすると、2階で寝ている人が眠れない…
そうなると、毎日の生活がストレスになってしまいます。
最近ではYouTubeなどでも「吹き抜け音問題」を検証している施主さんも多く、調べれば調べるほど「我が家で採用したら後から後悔する」と確信に至りました。
その他の理由・我が家に合わなかった背景
他にも、吹き抜けを見送った理由としては以下のようなものがあります。
- 我が家は南向きで日当たりが良すぎる立地
→ 吹き抜けがなくても十分明るい - 直射日光が入りすぎて夏暑くなるリスク
- 外観のバランスや断熱性の懸念(吹き抜けは冷暖房効率が落ちることも)
要するに、我が家の立地や生活スタイルでは、吹き抜けのメリットを活かしきれないと判断したのです。

吹き抜けに憧れはありましたが、我が家の場合にはメリットよりデメリットの方が大きそうでした。
吹き抜けがオススメな家とは?
もちろん、吹き抜けがすべての家庭に向かないわけではありません。
たとえば以下のような条件が揃っている家であれば、むしろ積極的に採用するメリットもあります。
- リビングが北向き・隣家が近く採光がとりづらい
- 2階に部屋数が少なく、南面を吹き抜けに使っても影響が少ない
- 少人数世帯で音の問題が気になりにくい
- メンテナンスを外注できる予算がある
- とにかく「おしゃれさ」や「開放感」を優先したい
吹き抜けは、家づくりにおける“オシャレの代名詞”とも言える存在です。
条件が合えば、日常を豊かにしてくれる素敵な間取りになるでしょう。
まとめ|我が家の「吹き抜けなし」はベストな選択だった
注文住宅の間取りに正解はありません。
吹き抜けを採用するかどうかも、その家族のライフスタイルと優先順位によって大きく変わります。
我が家では、
- 家族の音問題
- 2階の採光・部屋配置
- 掃除やメンテナンス性
を重視し、あえて吹き抜けは採用しませんでした。
「おしゃれさ < 暮らしやすさ」という判断が、今のところ間違っていないと感じています。
もし今、吹き抜けに憧れているけど迷っているという方がいれば、
一度「生活のリアルな動線」「音や暑さ」「2階の採光」なども含めて検討してみてください。
