二世帯住宅、それも完全同居型と聞くと、
気を遣いそう。
四六時中一緒で、ストレスが溜まりそう。
そんなイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。
実は私も、そう感じていた一人でした。
建て替え前の約2年間、妻の実家で義理の両親と完全同居していました。非常に仲良く暮らしていたものの、間取りの関係で自分の居場所と呼べる場所がなく、家の中で一人でくつろげる場所がありませんでした。婿の立場では、なおさら気を抜ける場所が欲しくなるものです。
そこで新居では、単に共有スペースを広くするのではなく、「快適に感じる家族の距離感」を意識しました。
入居から3か月。私は現在単身赴任中で週末を中心に過ごしていますが、平日についても家族から聞く限り、完全同居型でありながら快適に暮らせています。
間取りを考える際は、一人でくつろげる居場所を作ることを意識しました。一方で、全館空調は「高齢の両親もわんこもみんなが快適に過ごせるように」という理由で採用しています。
ただ、住んでみて初めて分かったこともあります。設計段階ではまったく意識していませんでしたが、全館空調は、一人でくつろげる居場所を作るうえでも大きな役目を果たしていたのです。
単に一人になれる場所を作っただけでは不十分で、その場所がいつでも使えてこそ、本当の意味で「居場所」として機能していました。
この記事では、建て替え前の同居から何を変えたのかを、実際の暮らしを交えて紹介します。
完全同居で大切なのは「一人になれる場所」
完全同居型の間取りを考えるとき、多くの方はまずLDKを広くしようと考えると思います。家族全員が集まる場所なのだから、広い方がいいはずだ、と。私も打ち合わせの初期はそう思っていました。
ところが実際に住んでみると、暮らしやすさを左右していたのは、共有スペースの広さだけではありませんでした。むしろ重要だったのは「一人になれる場所がいくつあるか」です。共有スペースを広くするだけでは、一人になりたいときの逃げ場までは作れません。ストレスが生まれるのは、一人になりたいのに居場所がない状況の方なんですよね。
そこで我が家では、LDKを共有する完全同居型を選びながら、家族それぞれの居場所を意識的に確保しました。
- 子世帯用のサブリビングを2階に設ける
- 親世帯の寝室は広めにして、パーソナルチェアを設置する
- 子ども部屋は、それぞれ専用の部屋として用意する
- リビングにもパーソナルチェアを置き、同じ空間の中に居場所を作る
ポイントは、居場所を「部屋」だけで考えないことです。同じリビングの中でも、ソファとパーソナルチェアがあれば、それぞれ別の居場所として機能します。
部屋として区切らなくても、ヌックのような小さなこもり場所を設ける方法もあります。我が家では採用しませんでしたが、これも居場所を増やす一手ですよね。
実際に生活してみて気づいたのは、パーソナルチェアに座るとソファの人と視線が交わらなくなることでした。おかげで、隣にいるのに別のことをしていても違和感がありません。一緒にお茶を飲みながら会話をするならソファだけでも足りますが、家族が思い思いに過ごす空間にするには、視線が交わらない居場所があるかどうかが効いてくるようです。
大きな部屋を一つ作るだけでなく、その中に落ち着ける居場所を複数作ったことが、6人で暮らす我が家には合っていました。
「一緒にいる」と「同じ空間に縛られる」は違う
ここがこの記事の一番お伝えしたい部分です。完全同居がしんどくなる大きな原因の一つは、一緒にいることそのものではなく、離れたいときに離れられないことだと思います。
たとえばある週末の夕方、我が家ではそれぞれがこんなふうに過ごしていました。
義父は自室のパーソナルチェアで居眠り
妻と義母はダイニングで談笑
娘はリビングのパーソナルチェアでテレビ鑑賞
私はソファでのんびりしながら、時折、会話に加わる
息子は2階のサブリビングでゲーム

全員が同じ家にいて、LDKには常に誰かしらがいる。でも全員が同じ部屋に固まっているわけではありません。話したくなったら自然と集まり、疲れたらそれぞれの居場所に戻れる。この行き来が無理なくできることが、完全同居の快適さそのものだったと感じています。
逆に言うと、居場所がひとつしかない家では、家族の誰かがくつろぎにくくなります。建て替え前の私がまさにそうでした。
全館空調は「家じゅうを居場所にする設備」だった
全館空調のメリットとして語られるのは、たいてい夏涼しい、冬暖かい、ヒートショック対策になる、といった性能面の話です。もちろんそれも事実なのですが、住んでみて、それだけではない効果を実感しています。
居場所があっても、暑ければ使われない
サブリビング、寝室、子ども部屋。せっかく居場所を作っても、そこが真夏に暑くて真冬に寒ければ、自然と使われなくなってしまいます。結局みんながLDKに集まることになり、距離が近すぎる状態に逆戻りしてしまいます。
これは想像ではなく、建て替え前に実際に起きていたことでした。
妻の実家では、夏は2階が日中暑すぎてほとんど近寄れなかったんです。個別エアコンだと、自分一人のために冷房を入れるのがもったいなく感じてしまい、家族が長時間過ごせる場所が自然とリビングに偏っていました。図面上は居場所があるのに、使われないまま終わっていたわけです。
家中が同じ温度だと「選択肢」が生まれる

新居では全館空調を採用しました。入居後初めての夏を迎え、連日の猛暑の中で、我が家の間取りと全館空調との相性の良さを本当に実感しています。どの部屋に移動しても体感がほとんど変わらないので、今日はここで本を読もう、今日は寝室で昼寝をしよう、子どもはサブリビングで過ごそう、という選択が自然に生まれるんですよね。
つまり全館空調は、我が家にとっては温度を整える設備というより、家じゅうを居場所として使えるようにする設備でした。前の章で書いた「離れたいときに離れられる」を、絵に描いた餅で終わらせず、実際に成立させているのが全館空調だったわけです。
間取りだけでも、空調だけでも完成しない
ここまでをまとめると、完全同居の快適さは掛け算だったということになります。
- 居場所だけあっても、暑い寒いで使われなければ意味がない
- 家中が快適でも、こもれる場所がなければ距離が取れない
- 居場所(間取り)× 温熱環境(空調)が揃って、はじめて機能する
なお全館空調の体感は、機種や地域、そして家の断熱・気密性能によって大きく変わります。我が家はUA値0.50(6地域における断熱等級5)の仕様で、C値も一般的に高気密に分類される水準に入っています。この前提があってこそ全館空調が無理なく効いている面は大きいと思います。
そしてもうひとつ、必ず気になるのが電気代ではないでしょうか。24時間動かしっぱなしで大丈夫なのか、という疑問はもっともです。我が家は太陽光と蓄電池を組み合わせており、月ごとの電力収支を実測データで公開しています。
全館空調単体の電気代ではありませんが、24時間運転を含む家全体の収支として参考になるはずです。
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建て替え前の同居から、何を変えたのか
同じ「完全同居」でも、建て替え前と今とでは暮らしやすさがまったく違います。相性が変わったわけでも、家族が入れ替わったわけでもありません。変えたのは家の方だけです。何をどう変えたのかを整理すると、次のようになります。
| 建て替え前に感じていたこと | 新居で変えたこと |
|---|---|
| 婿の自分にくつろげる場所がなかった | 子世帯用のサブリビングを設けた |
| 夏は2階が暑すぎて使われず、日中過ごす場所がリビングに偏っていた | 全館空調で、家中どこでも過ごせるようにした |
| リビングにはソファしか座る場所がなく、 大人4人が座ると圧迫感があった | ソファに加えてパーソナルチェアを配置し、 同じ空間にも複数の居場所を作った |
こうして並べてみると、単にLDKや家全体を広くしただけではありません。「一人になれる場所を増やし、その場所を一年中使える温度にした」。この2点が大きかったのだと思います。
ちなみに完全同居型・一部共用型・完全分離型それぞれの違いと選び方は、別記事で比較しています。そもそもどのタイプにするか迷っている方は、先にこちらを読んでいただくと判断しやすいと思います。
入居3か月で感じた、完全同居ならではの不便
ここまで快適だった点を書いてきましたが、間取りでは解決しきれなかった不便もあります。入居3か月時点で最も感じるのは、お風呂の順番待ちです。
大人4人と子ども2人の6人家族なので、一人30分としても全員が入り終わるまでに3時間かかります。遠出をして帰宅が遅くなった日は、どうしても最後の人の就寝が遅くなってしまうんですよね。ここは人数が多い二世帯である以上、避けにくい部分だと思います。
お風呂や洗面所をどう分けるかという話は、以前の記事で詳しく書いています。これから間取りを決める方は、そちらもあわせて確認してみてください。
▶ 二世帯住宅で後悔しないために確認したい10のポイントはこちら
逆に言えば、入居3か月時点で、大きな不満として挙がるのがこの程度だったのは、自分でも意外でした。間取りの工夫で解決できる部分が想像以上に大きかった、というのが正直な感想です。
間取りを決める前に家族で確認したいこと
我が家のやり方をそのまま真似ても、家族構成が違えば必要な居場所も変わります。打ち合わせに入る前に、次の点を家族で話しておくと、そのまま間取りに落とし込みやすくなるはずです。
- 誰が、どの時間帯に、どんな過ごし方をするか
- LDK以外で長時間過ごせる場所があるか
- 寝室を就寝専用にするか、居場所としても使うか
- 夏と冬にも、その部屋を本当に使えるか
- 空調費を理由に、使わなくなる部屋が出ないか
我が家で最も効果が大きかったのは、子世帯用のサブリビングでした。ただし、誰がどの時間帯に一人の時間が必要になるかで、優先すべき居場所は変わります。ご家庭によっては在宅ワークや夜勤などもあるでしょうし、親世帯の書斎や広めの寝室の方が効くこともあるはずです。
空調の方式で、重視すべき場所は変わる
もうひとつ、間取りを考えるうえで意識しておきたいのが、採用する空調の方式によって重視すべき場所が変わるということです。
家族が多い二世帯は、どうしても部屋数が増えがちです。ただ個別エアコンの場合、使うたびに冷暖房を入れる手間や電気代が気になり、無意識のうちに長時間使う部屋を絞りやすくなります。その結果、個室が寝るための部屋に近づき、日中の居場所がLDKに偏ることもあります。
一方で全館空調なら、どの部屋もいつでも使いやすい状態なので、個室を昼間の居場所として活用しやすくなります。
つまり個別エアコンを前提にするなら、家族が集まりやすい共用部分の中にも複数の居場所を作ることが重要になり、全館空調なら家全体に居場所を分散させる計画が立てやすくなるということです。

全館空調を採用しない場合は、居場所のためだけに個室を増やすより、まず共用部分の中に複数の居場所を作る方が現実的かもしれません。ソファとは視線の向きが異なるパーソナルチェアを置く、といった工夫がその一例です。そのうえで、テレワークなどで個室を長時間過ごす居場所として使うなら、仮に狭い部屋であっても個別エアコンを設け、夏冬とも無理なく使える環境にしておくことが大切だと思います。
まとめ|快適さを支えたのは「距離感を保てる家」
私は以前、完全同居が快適かどうかは家族の相性で決まると思っていました。もちろん相性は大切ですし、我が家がうまくいっているのも、義理の両親との関係が良好だからという面は間違いなくあります。そのうえで実際に住んで感じたのは、相性が良くても、居場所がなければ窮屈になるということでした。建て替え前の私がまさにそうだったからです。
だからこそ、適度な距離感を保てる家になっているかどうかが、想像以上に暮らしやすさを左右するのだと思います。
完全同居型二世帯だからと言って、ずっと一緒にいるわけではありません。必要なときは自然に集まり、一人になりたいときは無理なく離れられる家。この距離感を間取りと全館空調で実現できたことが、3か月住んで感じた一番の成功だったと思っています。
とはいえ我が家も、最初から「居場所と温熱環境の掛け算」という言葉で整理できていたわけではありません。複数の間取り案を見比べながら、どうすれば家族のだれもが一人の居場所を確保できるかを、一つずつ具体的に詰めていきました。夏と冬もその場所を使えるかどうかまでは当時考えていませんでしたが、結果的にその2つが揃ったことが大きかったのだと思います。
二世帯住宅は、共有範囲だけでなく、各世帯の距離感をどう間取りに落とし込むかで、提案内容に差が出やすい分野です。検討初期であれば、1社の案だけで決めず、複数社の間取りプランを比較してみると、自分たちに必要な居場所が見えやすくなると思います。
