「ヘーベルハウスは気密が弱い」「鉄骨は湿気に弱いのでは」。そんな話を聞いたことがある方も多いと思います。ちょうど湿度が一番気になる梅雨の時期に、我が家の室内外の温湿度を実測してみました。この記事では、そのデータをもとに「気密にこだわった甲斐はあったのか」を、シミュレーションも交えて検証します。
測定環境|LDKの温湿度計と外気データ
今回のデータは、2026年6月22日〜27日の6日間、LDKに設置した温湿度計で15分間隔に記録したものです。外気のデータは気象庁の実況天気(3時間値)を15分間隔に補間して重ねています。ちょうど梅雨らしい、蒸し暑い日が続いた期間です。


温度は「緩衝止まり」|正直な現状
まず温度から。外気は期間中19〜27℃と8℃近く動いたのに対して、室内は23.5〜26.9℃と3.4℃の範囲に収まりました。外の変動をそのまま受けていない、という意味では緩衝はできています。
ただ、この時期は外気温そのものが穏やかで、「気密のおかげで涼しい」と結論づけるには真夏・真冬のデータが必要です。温度面の検証は実際の夏を迎えてから追記する予定です。そこで今回は、この時期だからこそ差がはっきり現れた「湿度」に注目します。
湿度は別次元|外84.7%でも室内は57.8%
ここからが本題です。期間中の外気の相対湿度は平均84.7%、6月25日から27日にかけては99%近くまで張り付く日もありました。梅雨らしい、じっとりした空気です。
一方の室内は平均57.8%。外が99%近くまで上がった日でも、室内は65%前後で止まっていました。温度の差と比べると、湿度の差はまさに別次元です。この差は、気密によって湿気の流入が抑えられ、そのうえで全館空調(さらら除湿)が室内の湿気を取り除いているからこそ生まれていると考えています。
気密はいわば、除湿を空回りさせないための土台です。
梅雨の室内での体感値はどうだったか
数値だけでなく、実際の生活での体感もお伝えしておきます。
雨の日はさすがに室内でも湿度をわずかに感じる瞬間はありましたが、冷房から除湿に切り替えたところ、リビングのタイル床がサラッとした質感に変わりました。就寝時も、以前住んでいた家で感じていたような寝苦しいジメジメ感はありません。ちなみに洗濯物は浴室乾燥機を使っているので、室内干しによる湿度上昇は今回のデータに影響していません。
この室内環境を実際に作っているのは全館空調(さらら除湿)です。梅雨の期間中どう動いていたかは、別記事で実測データとともに詳しくまとめています。
気密にこだわった甲斐はあったのか|湿気流入量のシミュレーション
ここからは、その気密の役割を数字で深掘りします。
なぜ気密にこだわったのか
そもそも我が家が気密にこだわったのは、光熱費のような目先の損得よりも、長く住む家の環境を守りたかったからです。
湿気は快適さを損なうだけでなく、カビやダニの温床になり、じわじわと家そのものにもダメージを与えます。除湿しても全然効かずにジメジメする、という状態だけは避けたい。それが契約時に気密測定まで条件にした動機の一つでした。
計算の考え方|C値と湿気流入量の関係
では、その気密は湿気に対してどれくらい効いているのか。感覚的にはわかっても、数字にしてみないと実感が湧きません。そこで、C値(気密性能を示す数値)によって、すきまから入ってくる湿気の量がどれくらい変わるのかを試算してみました。
計算の考え方は次の通りです。
C値が大きいほど家全体のすきまが増え、そこから空気が出入りする量(漏気量)が増えます。漏気量に、外気に含まれる湿気の量(絶対湿度)を掛け合わせると、すきまから流れ込む湿気の総量が見積もれます。
今回は延床200m²程度の、二世帯住宅を想定した大きめの家という前提で試算しました。(我が家の正確な延床面積とC値は非公表ですが、目安として見ていただければと思います)
| C値 | 想定される住宅 | すきま風が持ち込む外気水分の総量(1日・目安) |
|---|---|---|
| 10.0 | 気密対策をしていない古い住宅 | 約173kg |
| 2.0 | 旧基準・対策ありの一般的な住宅 | 約35kg |
| 1.0 | 高気密ラインの下限 | 約17kg |
| 0.5 | 超高気密ライン | 約9kg |
ひとつ補足すると、この数字は「すきま風が室内に持ち込む外気水分の総量」です。実際に空調が処理すべき除湿の負担になるのは、このうち室内との湿度差にあたる部分(総量のおおよそ2割弱)になります。ただ、C値による差の構図はどちらで計算しても変わりません。
試算結果からわかること
この表を作ってみて、思っていた以上に印象が変わりました。
「気密対策なしの家」と「旧基準の一般的な家」の差(173kg→35kg)は劇的です。ここで湿気流入の大部分がすでに減っています。一方で「高気密ラインの下限(C値1.0)」から「超高気密(C値0.5)」への差(17kg→9kg)は、絶対量で見るとそこまで大きくありません。
イメージしやすく言うと、気密対策のない家では、梅雨の1日で2Lペットボトル85本分を超える水分が、すきまから家の中へ入り込んでくる計算になります。これを毎日、除湿器や空調で処理し続けるのは大変ですし、処理しきれなかった湿気は壁の中や家具の裏でカビ・ダニの温床になっていきます。高気密ラインに入っていれば、この流入がペットボトル8〜9本分まで減る。空調が無理なく処理できる量に収まるからこそ、「除湿しているのにジメジメする」が起きないわけです。

補足|この試算の前提と注意点
この試算には大事な前提があります。実は換気による湿気の出入りは、C値だけでなく風の強さや室内外の温度差にも大きく左右されます。専門家の資料を見ると、外部風速が2〜3m/sを超えたあたりから換気量が一気に増える傾向があり、気密性能と同じくらい「その日の風」が効いてくることがわかります。
今回の梅雨の測定期間は、室内外の温度差がわずか3℃程度と小さく、寒暖差による押し出し効果(いわゆる煙突効果)はほとんど働いていなかったはずです。つまりこの時期の換気量は、主に風の強さに左右されていた可能性が高いということです。逆に言えば、温度差が大きくなる冬ほど煙突効果は強く働くため、気密の効果がより顕著に体感できるかもしれません。
この点も、冬の実測で改めて確認したいと思っています。
我が家のエアコンで処理しきれるのか|C値別の余裕度
ではこの湿気の流入を、実際のエアコンはどこまで処理できるのでしょうか。
我が家の全館空調にはダイキンのS503ALV(16畳用・5.0kWクラス)を1階と2階に1台ずつ使っています。この機種自体の除湿量は公表されていませんが、同じダイキンのさらら除湿搭載機では、業界統一の測定基準で最大1,800ml/hという公表値があります。ただし、これはS503ALVそのものの実使用時の保証値ではありません。
そこで今回は、あくまで「能力の上限目安」として24時間換算の約43kg/日の除湿力があると仮定して、C値別の負荷と比べてみます。
ここで比べるのは、先ほどの「持ち込まれる水分の総量」ではなく、エアコンが実際に処理すべき正味の除湿負荷(室内外の湿度差ぶん)です。
| C値 | すきま風の除湿負荷(1日) | エアコン能力に対する割合 |
|---|---|---|
| 10.0 | 約32kg | 約75% |
| 5.0 | 約16kg | 約37% |
| 2.0 | 約6.4kg | 約15% |
| 1.0 | 約3.2kg | 約7% |
| 0.5 | 約1.6kg | 約4% |
この表が、「昔の家はエアコンをつけて除湿しているのにジメジメする」の正体をよく説明してくれます。
C値10の低気密住宅では、すきま風の処理だけでエアコンの除湿力の75%が食い潰されます。エアコンは炊事・入浴・人の呼吸といった生活から出る湿気や、24時間換気が取り込む外気の湿気も処理しなければならないので、すきま風だけで能力の大半を使ってしまうと、もう手が回りません。除湿を頑張っているのに湿度が下がらない家は、エアコンが弱いのではなく、すきまとの追いかけっこに負けている可能性が高いわけです。
一方、C値1.0の高気密ラインなら、すきま風の負荷はエアコン能力のわずか7%。残りの余力を生活湿気や換気分の処理にたっぷり回せます。しかもこの表はエアコン1台分の能力で計算した控えめな見積もりで、我が家は1階と2階にS503ALVを1台ずつ設置しているため、家全体で見れば余裕はさらに2倍あることになります。

我が家の梅雨に「除湿してるのにジメジメ」が起きなかった理由は、まさにこの余裕にあったのだと思います。目安として言えば、C値1.0を切っていれば、すきま風の湿気はエアコンにとって誤差の範囲に収まる、というのが試算から見える答えです。
C値0.5以下の木造ならもっと変わる?
「木造の超高気密住宅(C値0.5以下)で建てていたら、もっと快適だったのでは」という疑問にも触れておきます。
先ほどの試算で言えば、C値1.0から0.5まで気密を上げると、すきま風が持ち込む水分は約17kgから約9kgへ、およそ半分に減ります。比率で見れば確かに大きい。ただ快適ラインとの差分で見ると違いは1日あたり約1.6kgで、エアコン能力に対する負荷で言えば7%が4%になる、という差です。
どちらもすでに「余裕たっぷり」の領域なので、体感として大きく変わるかというと、湿気に関しては疑問が残ります。高気密ラインに入っている時点で、効果の大部分は得られている、というのが試算から見えてくる実感です。
もちろん、これは湿気の流入量というひとつの切り口での話です。断熱性能との組み合わせや、防音・耐久性など、気密を上げるメリットは他にもあります。そのあたりは断熱・気密をまとめた別記事で詳しく書いています。
▶ ヘーベルハウスの断熱・気密は実際どうなのか|施主がUA値とC値で正直に解説
まとめ|気密は「効いていた」
「ヘーベルは鉄骨だから気密が弱い」と言われることがあります。もちろん木造の超高気密住宅と比べれば、さらに上の性能を目指す余地はあります。それでも今回の実測では、外気湿度が99%近い梅雨の環境でも、室内は60%前後を維持できていました。気密が外気の侵入を抑え、全館空調が室内の湿気を管理する。この両輪が噛み合った結果です。
気密は光熱費の節約というより、カビやダニから家を守り、長く快適に住み続けるための投資だと我が家は捉えています。少なくとも我が家の梅雨に関して、「気密が弱くて湿気に悩む」という心配はありませんでした。これが、タイトルの問いへの答えです。
温度面の検証と、真夏の実測データについては、あらためて追記する予定です。気密測定そのものの経緯については、こちらの記事にまとめています。
測定期間中の生活の様子は、アメブロでも公開しています。あわせてどうぞ。
