はじめに|「鉄骨は寒い」「気密が弱い」は本当なのか
「ヘーベルハウスって、鉄骨だから寒いんじゃないの?」
「気密が弱くて、夏も冬も光熱費がかさむのでは?」
ヘーベルハウスを検討中の方なら、一度はこの不安にぶつかったはずです。
結論から言ってしまうと、これは半分本当で半分誤解です。
そして大事なのは、その「半分」がどこなのかを、数値で具体的に把握すること。
ここがあいまいなまま契約すると、住んでから「思っていたのと違う」となりかねません。
私が打ち合わせをした範囲での正直な感想を言うと、ヘーベルハウスは気密についてはあまり力を入れているようには感じられず、具体的な数値も出していません。
だからこそネット上には真偽不明の情報やネガティブな情報も多く、私自身も契約の際に最も気になっていたポイントです。
この記事では、実際にヘーベルハウスで二世帯住宅を建てた施主として、我が家のUA値をベースに、断熱と気密のリアルを正直にお伝えします。良いところも、割り切りが必要なところも、隠さず書いていきます。
読み終えるころには、ヘーベルの断熱・気密を「自分の家族にとって十分かどうか」で判断できるようになっているはずです。
なお、住んでみての夏・冬の体感は、季節を一巡してから別途レポートします。今回は「仕様と設計の考え方」を数値で押さえる回だと思ってください。
ヘーベルハウスの断熱の仕組み|ネオマフォームとALCの役割

ヘーベルハウスの断熱性能を支えているのは主にネオマフォームです。そのうえで、外壁にはALCコンクリート(ヘーベル板)が採用されています。
断熱材のネオマフォームはフェノールフォームという種類で、薄くても高い断熱性能を発揮するのが特徴です。外壁・屋根・床のそれぞれに断熱層を設け、建物全体を包む考え方です。
ALCは軽量気泡コンクリートと呼ばれ、内部に無数の小さな気泡を含んでいます。この気泡が熱の伝わりをやわらげるため、ALCにも木と同程度の断熱性があります。
| 材質 | 熱伝導率 [W/(m·K)] | 特徴 |
|---|---|---|
| ネオマフォーム | 約0.020 | 現行トップクラスの断熱性能。ヘーベルハウスの内断熱に採用 |
| 硬質ウレタンフォーム | 約0.024 | 吹付け・ボードとも普及。ネオマに次ぐ高性能 |
| 押出法ポリスチレンフォーム | 約0.028 | 基礎や床に多用。水に強い |
| 高性能グラスウール16K | 約0.038 | 木造住宅で最も一般的。コスパに優れる |
| 木材(杉など針葉樹) | 約0.12 | 一定の断熱性があるが、断熱材ほどではない |
| ALC(ヘーベル板) | 約0.15 | 普通コンクリートより高断熱だが、断熱材とは数値が1桁違う |
| 普通のコンクリート(参考) | 約1.6 | 断熱性はほぼ期待できない。 |
ここで注意したいのは、ALCはあくまで外壁であって断熱材ではないという点です。
「ヘーベルはALCだから断熱は不要」という古い口コミを見かけますが、これは誤解で、実際にはきちんと断熱材が入っています。
つまりヘーベルハウスは、高性能な断熱材であるネオマフォームで断熱し、その外側を高耐久・高耐火のALCで包む構造です。
断熱性能だけでなく、耐久性や耐火性まで含めてバランス良く成立させているのが特徴と言えるでしょう。
我が家のUA値は0.50|「断熱等級5」の実力とは
ここからが本題です。我が家の設計上のUA値は0.50でした。
UA値は、家全体からどれくらい熱が逃げやすいかを示す指標で、数値が小さいほど断熱性が高いことを意味します。そしてこのUA値が、いわゆる「断熱等級」の判定に使われます。
断熱等級は気候に応じて全国を8つの地域に区分されていて、寒い地域ほど厳しいUA値が求められます。地域区分ごとの基準を整理すると、次のようになります。
| 地域の例 | 断熱等級5 | 断熱等級6 | 断熱等級7 |
|---|---|---|---|
| 盛岡など | 0.50 | 0.28 | 0.20 |
| 仙台など | 0.60 | 0.34 | 0.23 |
| 宇都宮・東京・長崎など | 0.60 | 0.46 | 0.26 |
この表からわかるように、UA値0.50は、盛岡あたりより南の広い地域では「断熱等級5」に相当します。
これはZEH(ゼロエネルギーハウス)基準を満たす水準で、決して低いわけではありません。
一方で、ワンランク上の「断熱等級6」になると、我が家の地域区分では0.46が必要でした。0.50との差はわずかに見えますが、等級としては1つ違います。
YouTubeなどで「等級6じゃないと後悔する」といった情報を見て不安になる方も多いと思います。
そこで、この差が実際どれくらいの意味を持つのか、ヘーベルハウスの担当者に直接確認しました。返ってきた回答が次のものです。
断熱等級6(UA値0.46)と等級5(UA値0.50)を比べると、熱量の差はおよそ8パーセント。体感上の差はほぼないと考えられるが、光熱費では年間3000〜4000円ほど変わる可能性がある。
メーカー自身が出した数字なので、実情にかなり近いはずです。
私もこの記事を書くにあたり改めて自分なりにも調べましたが、熱量差、体感値、光熱費の差、などは間違いなさそうです。
等級5と6の差を整理すると
- 体感値はほぼ変わらない
- 熱量差は約8%
- 光熱費の差は年に数千円レベル(月に数百円)
この差を大きいと見るか小さいと見るかは人それぞれですが、少なくとも「等級5だから寒くて後悔する」という話ではないんですよね。
断熱は後から強化できない|ヘーベルの割り切りをどう考えるか
ここで一つ、検討中の方にぜひ知っておいてほしい事実があります。
ヘーベルハウスでは、断熱材の厚みを増やしたり、屋根裏に断熱材を吹き付けで追加したりといったオプションが、一切できません。
私も打ち合わせで確認しましたが、「断熱仕様は決まっていて、増やす選択肢はない」という回答でした。
我が家ではタイル床を採用しているため、底冷えを防止するために床の断熱を強化したかったのですが、それは叶いませんでした。
ハウスメーカーによっては「断熱材を厚くして等級7を目指す」といったカスタマイズが効く場合があります。それと比べると、ヘーベルの断熱性には自由度がありません。
良く言えば迷う余地がなく、悪く言えばお金をかけても性能を引き上げられません。
ではこれをどう捉えるか。
私は、ヘーベルの断熱は「等級5から6の範囲で必要十分」という設計思想なのだと理解しています。
先ほどの担当者の回答にあった通り、等級5と6の体感差はほぼなく、光熱費差も年数千円。そこに大きなコストや手間をかけるより、構造・耐震・耐火というヘーベルの得意分野に振り切る。そういう割り切りだと考えています。
家づくりは、どこにお金をかけて、どこを割り切るかの連続です。
断熱を青天井で追求できないことは、ヘーベルを選ぶ上での前提として理解しておくと、後から「思っていたのと違う」とならずに済みます。
気密(C値)の実情|高気密ではあるが、超高気密ではない
そして、私が建てる前に一番知りたかったのが、「へーベルハウスが実際どのくらいの気密(C値)を取れるのか」でした。
気密性能はC値という数値で表します。家全体にどれくらいの隙間があるかを示すもので、これも小さいほど隙間が少なく、気密が高い家ということになります。
断熱(UA値)が「熱の逃げにくさ」なら、気密(C値)は「すきま風の少なさ」とイメージするとわかりやすいです。一般的なC値の目安を整理すると、次のとおりです。
| C値の水準 | 位置づけ |
|---|---|
| 1.0以下 | 一般に「高気密住宅」と呼ばれるライン |
| 0.5以下 | さらに性能を追求するメーカーが標準とする水準 |
| 0.2〜0.3前後 | 超高気密と呼ばれる最高レベル |
参考までに、全棟で気密測定を行う一条工務店の公表値はおおむね0.6前後とされています。木造の高気密住宅は、このあたりの数字で競い合っているわけです。
ヘーベルハウスはC値を標準公開していない
ヘーベルハウスはC値を標準公開しておらず、営業担当者に確認しても、明確な数値を提示してもらうことはできませんでした。
私が調べた範囲でも、根拠のある情報はあまり多くありません。ネット上では、自分で気密測定業者を探して測定したという施主の情報が、いくつか見つかる程度でした。
そのため私も、気密測定を実施する前提で契約前にヘーベルハウスの担当者に相談し、了承を得たうえで測定業者を探していました。
その後、最終的にはヘーベルハウス側から測定実績のある日本住宅保証検査機構(JIO)を紹介してもらい、そちらで測定してもらうことになりました。

我が家のC値は高気密と呼べる水準だった
では実際に我が家の場合はどうだったか。
気密測定を実施した結果、一般的に「高気密」と呼べる水準にはしっかり入っていました。
ただし、C値0.5以下を売りにするような超高気密のメーカーと張り合える数字ではありません。ここは正直にお伝えしておきます。
つまり我が家の実測値から見たヘーベルハウスの気密は「高気密のラインには入るが、超高気密ではない」という結果でした。
これが、検討中だった私が一番欲しかった結論です。
C値をあえて公開しない理由
具体的なC値については、すみませんがあえて伏せています。
理由は、ヘーベルハウス側から「気密の数値は構造プランや施工によって変わりやすいため、数字の公表は控えてほしい」という説明があったからです。
この背景には、実はUA値とC値の性格の違いがあります。
UA値は、断熱材や窓の仕様から設計図面の段階で計算できる数値です。なので契約前にきちんと提示できます。
一方でC値は、実際に施工してみないと分かりません。
同じ図面でも、現場の施工精度や、配管・配線の隙間処理の丁寧さによって数字が変わるからです。つまりC値は「設計図では約束できない、現場で初めて確定する数値」なんですよね。
だから設計段階で約束できるUA値は出せるが、現場依存のC値は安易に公表できないという考えには納得しました。
最初は「折角いい数値が出たんだし公表してもいいのでは?」とも考えましたが、UA値とC値の特性の違いを考えると納得しています。
鉄骨造は構造の性質上、木造の超高気密住宅ほどの数字は出しにくい。そこは事実として受け止めた上で、では暮らしの快適性をどう担保するかが次の論点になります。
気密の弱点は全館空調で補う|24℃設定でいける理由
超高気密ではない家で、どうやって一年中快適な室温を保つのか。我が家の答えは全館空調です。
もちろん気密性能そのものが向上するわけではありません。しかし住み心地という観点では、全館空調によって差を感じにくくすることはできると考えています。
我が家では「ロングライフ全館空調」を採用しました。
これはダイキンの業務用エアコンを使った全館空調で、一階と二階をそれぞれ一台のエアコンで管理しています。
ここで効いてくるのが、全館空調と気密・断熱の相性です。
担当者からは、全館空調なら設定温度を24度以上にしておけば夏型結露も問題ない、と説明を受けました。個別エアコンだと26度以上が推奨されるので、全館空調のほうが2度低い設定でも快適に保てるという話です。
これは家全体の温度ムラが少なく、空気が常に循環しているため、低めの設定にしても急激に冷やす事がないためです。
気密が超高気密ではないぶん、わずかな隙間からの空気の出入りはゼロにはなりません。けれども、全館空調で家全体の温度と湿度を計画的にコントロールすれば、そのデメリットは実用上ほとんど気にならないレベルに抑えられます。
ちなみに、高気密と全館空調の組み合わせで気になる夏型結露については、ヘーベルの担当者回答も交えてアメブロで詳しく実験・検証しています。気になる方はそちらも覗いてみてください。
【夏型結露対策】HMに直接聞いたお風呂の換気方法と冷房の設定温度
契約前に確認したい3つのチェックポイント
ここまでを踏まえて、これからヘーベルハウス(や他メーカー)を検討する方が、打ち合わせで確認しておくと後悔しない項目を3つにまとめます。
断熱等級ではなくUA値を確認する
一つ目は、UA値を地域区分とセットで確認することです。
「等級5です」「等級6です」という言葉だけでなく、自分の建築地がどの地域区分で、基準UA値がいくつなのかまで聞いておくと、カタログの等級表示に惑わされません。同じUA値でも地域によって等級は変わります。
また同じ等級だとしてもUA値には幅があるため、気になる場合はしっかりと数値で確認する事をお勧めします。
気密測定可能か確認する
二つ目、気密測定の有無と方針を聞いておくことです。
気密測定を行わないメーカーも決して珍しくない(むしろやらない方が多い?)ので、ここを確認するだけで、気密への姿勢が見えてきます。
ハウスメーカーが気密測定をしていない場合には、5〜10万程度の費用はかかりますが自分で測定する事をお勧めします。
気密測定する事で数値として現れるだけでなく、施工品質にも少なからずプラスに働きますからね。
窓の配置や遮熱をしっかり考える
三つ目は、断熱は「増やせない前提」で窓の計画を詰めることです。
ヘーベルのように後から断熱を強化できない場合、UA値を左右するのは主に窓になります。
大きな窓や数の多い窓は開放感と引き換えに断熱性を下げるので、どこにどの位の大きさの窓を入れるかは、断熱と暮らしやすさのバランスで考えるのがおすすめです。
西日は低い角度で横から差し込むため軒では防ぎにくく、断熱の事を考えるなら西側には極力窓を設置しない方がいいですね。
我が家ではどうしても西側に窓を設置したい箇所があったので、そこにはアウターシェードを設置して、家の外側で日差しを遮るようにしました。
まとめ|ヘーベルハウスの断熱・気密は「必要十分」
最後に要点を整理します。
- 我が家のUA値は0.50で、広い地域で断熱等級5に相当する。
- 間取り次第では断熱等級6(UA値≦0.46)を達成可能。
- 等級6(0.46)との差は、熱量で約8パーセント。体感差はほぼないとメーカーも回答。
- 断熱は後から増し張り・吹付などで強化できない。
- 気密は高気密ラインには入るが、超高気密ではない。
- 設計で出るUA値と違い、C値は施工しないと分からないため非公表。
- 気密の弱点は全館空調でカバー。
「鉄骨は寒い・気密が弱い」というイメージは、半分本当で半分は誤解、というのが施主としての実感です。
実際まだ真夏と真冬は経験していませんが、全館空調によってランドリールームや納戸などの部屋も温度が均一に保たれているのは非常に快適です。
ここで一つ、家づくり全体を通して感じたことを付け加えておきます。
断熱・気密を本気で突き詰めようとすると、どうしても施工方法や間取りの自由度が制限される場面が出てきます。気密ラインを途切れさせない構造上の制約や、断熱を厚くするための壁の取り方など、性能と自由度はトレードオフの関係にあるんですよね。
先ほどから書いている通りヘーベルハウスは、断熱・気密が決して得意なハウスメーカーではありません。むしろ苦手な部類です。
それでもヘーベルハウスを選んだのは、デザインの好み、間取りの自由度、アフターサービスの体制、コストのバランスを総合的に見たとき、我が家にとっては一番納得できる選択だったからです。
家づくりで何を重視するかは、本当にその人・その家族次第です。
性能を最優先するなら、もっと数値の高いメーカーも他にあります。だからこそ、一社だけで決めずに、ぜひ色々なメーカーを見比べてみてください。
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