「木造のほうが断熱・気密は高い」
家づくりを調べ始めると、かなり早い段階で耳にする話ではないでしょうか。私も検討中はそう思っていました。
私は最終的に鉄骨のヘーベルハウスで二世帯住宅を建てましたが、そこに至るまでにヘーベルハウスを含む8社と面談しています。はじめは展示場に足を運んで対面で話を聞き、途中からはオンラインでの面談に切り替えて、間取りの提案まで受けました。
今回はそのうち、名前が挙がることの多い木造ハウスメーカー4社を、公式サイトとプレスリリースだけを使って同じ物差しで並べ直します。取り上げるのは次の4社です。
・一条工務店
・三井ホーム
・住友林業
・積水ハウス シャーウッド
記事の後半では、各社の営業担当が断熱・気密についてどのように説明してきたかにも触れています。
なお、この記事では金額の比較はしません。木造各社からいただいたのはファーストプランの概算までで、契約前提の見積もりではないからです。断熱と気密という一点に絞って見ていきます。
①木造なら高気密高断熱?結論から
先に結論を書きます。4社を並べて分かったのは、木造という共通点よりも、会社ごとの違いのほうがはるかに大きいということでした。
特に差が出るのが気密です。C値を数値で公表し、全棟で気密測定を実施していると公式に明記しているのは、この4社では一条工務店だけでした。
まず性能のランキングではなく、公式サイトから何が確認できるかを並べます。
| 項目 | 一条工務店 | 三井ホーム | 住友林業 | 積水ハウス シャーウッド |
|---|---|---|---|---|
| 断熱等級の表記 | 主力2商品で等級7を標準仕様 | 等級6に対応/上位仕様で等級7 | すべての地域で等級6に対応 | 等級6に対応 |
| UA値の示し方 | 断熱等級を前面に説明/UA値は図表等で掲載 | 0.43/0.39/上位仕様は0.26 | 断熱ページ本文に数値なし/2020年のリリースに0.41 | 数値の記載を確認できず |
| UA値の算定条件 | 同条件の記載を確認できず | 開口面積を抑えた37坪のシミュレーション | 開口面積を抑えた50坪のシミュレーション | ― |
| C値 | 0.59(平均実測値) | 記載を確認できず | 記載を確認できず | 記載を確認できず |
| 気密測定 | すべての家で実施と明記 | 記載を確認できず | 記載を確認できず | 記載を確認できず |
先に断っておくと、表の「記載を確認できず」は性能が低いという意味ではありません。公式サイトで確認できる範囲がそこまで、という意味です。ここを取り違えると比較を見誤ります。
参考:我が家のヘーベルハウスの場合
ヘーベルハウスは2025年1月のプレスリリースで、戸建全商品の断熱等級6標準仕様化を発表しています(省エネ基準地域区分5〜7が対象)。ただし我が家は、その標準化より後に契約したにもかかわらず、窓が多いという間取りの事情でUA値0.50、断熱等級5になりました。C値については公表されていないため、気密測定を行うことを契約時に条件として入れています。
このことは記事の後半でも触れています。
②断熱等級の「標準」に付く但し書き
まず断熱等級から見ていきます。同じ「等級6」でも、各社の書きぶりは微妙に違います。
- 一条工務店
- 2026年4月3日、グラン・スマートとアイ・スマートの2商品について断熱等級7を標準仕様で提供すると発表。販売地域の全都道府県で対応可能とされています
- 三井ホーム
- 断熱等級6に対応。上位仕様の「MOCX THERMO」で断熱等級7
- 住友林業
- 独自の「360°TRIPLE断熱」で、すべての地域で2027年施行予定の新ZEH基準(断熱等性能等級6)に対応
- 積水ハウス シャーウッド
- 構造柱に120mm角の柱を使い、壁体内の空間を活かして断熱等級6に対応
ここで見落としたくないのが、「標準」「対応」という表記には条件が付く場合があることです。一条工務店の等級7標準化には「建築地やプラン、採用する仕様によっては対応できない場合があります」と注記されています。三井ホームの等級6にも「プラン、建築地域など条件によっては対応できない場合があります」という同趣旨の記載があります。
三井ホームの等級7はさらに条件が具体的でした。新工法の発表資料には、省エネ基準地域区分5〜7地域のみの提供で、1〜4地域は等級6までとなること、そして省令準耐火仕様のみの提供となることが明記されています。「オプションで等級7も選べる」という一文だけでは見えない部分ですね。
標準化は「保証」ではないと実感した話
ヘーベルハウスは2025年1月に全商品で断熱等級6の標準仕様化を発表しています。我が家の契約はその後です。それでも最終的な設計はUA値0.50、断熱等級5でした。理由は単純で、窓を多く取ったからです。
「標準仕様」と発表されていても、すべてのプランでその等級になることを保証するものではありません。カタログの等級ではなく、自分のプランで計算した結果を出してもらう。これが最初のチェックポイントになります。
③UA値は同じ土俵で比べられない
次はUA値です。数値が小さいほど熱が逃げにくい、という指標ですね。各社の数字を並べたくなるところですが、その前に確認しておきたいことがあります。
三井ホームの公式情報には、従来仕様の0.43、MOCX WALL工法の0.39、そして断熱等級7の仕様「MOCX THERMO」の0.26と、複数のUA値が掲載されています。つまり「三井ホームのUA値」を一つの数字で表すこと自体に無理があるわけです。
さらに0.43と0.39には、開口面積を抑えた37坪のシミュレーションによる試算であり、保証するものではないという注記が添えられています。窓を絞ったモデルプランの計算値、ということですね。

住友林業も同様に、UA値のグラフには開口面積を抑えたシミュレーションプラン(50坪)による試算であること、アルゴンガス入りLow-E複層ガラスを採用した場合の試算であり物件によっては採用していない場合があることが注記されています。
一条工務店は等級を前面に出している
意外だったのが一条工務店です。公式サイトを読むと、単一のUA値よりも断熱等級を前面に出して説明していることが分かります。示されているのは、UA値でも業界最高水準であるという説明と、断熱等級7を標準仕様にしたという発表です。Q値0.51も掲載されていますが、こちらは自社調べで、他社の性能は2015年6月時点のカタログ値を参照したものとされています。
整理すると、公表されているUA値は「その会社が、どんな家を想定して計算したか」がセットになった数字です。坪数も窓の取り方も違う数値を横に並べても、それだけでは順位になりません。ネット上の比較表やランキングを見るときも、出典と時点、そして掲載されている仕様が現行のものかどうかは確認しておきたいところです。
④断熱材は厚みだけでは比較できない
では、その数値を作っている中身を見ていきます。まずは断熱材です。
| 会社 | 断熱材の種類 | 壁 | 天井・屋根 | 床 |
|---|---|---|---|---|
| 一条工務店 | 高性能ウレタンフォーム | 外側50mm+内側140mm | ― | ― |
| 三井ホーム | 高性能グラスウール(屋根はEPS) | 140mm | 天井140mm/屋根はダブルシールドパネル | 89mm |
| 住友林業 | 高性能グラスウール24K(床は押出法ポリスチレンフォーム) | 105mm | 210mm(105mm×2重) | 100mm |
| 積水ハウス シャーウッド | 記載を確認できず | 120mm角の柱による壁体内に充填 | ― | ― |
| 参考:ヘーベルハウス | ネオマフォーム | 60mm(平屋・2階建て) | ― | ― |
※各社が公式に公開している情報の範囲を整理したもので、同一条件の仕様比較ではありません。住友林業の数値は2020年9月の公式ニュースリリース、三井ホームの壁140mmは2024年10月の新工法発表資料に基づく記載です。
表だけを見ると、一条工務店の190mmに対してヘーベルハウスは60mmですから、大きな差に見えます。ただし断熱材は素材によって熱の伝わりにくさが違うため、厚みだけでは比較できません。
さらに、確保できる厚みは構造や断熱方式とも関係します。三井ホームは2×6材を使った壁、シャーウッドは120mm角の柱による壁体内を活用するなど、断熱のつくり方そのものが会社によって違うからです。見るべきなのは何mmかではなく、何を、どこに、どう入れているかということですね。

もう一点、一条工務店については商品の確認も必要です。この「外内ダブル断熱構法」の対応商品はグラン・スマートとアイ・スマートに限られます。グラン・セゾンやセゾン、百年などは「夢の家I-HEAD構法」という別系統で、断熱材もEPS1号相当と説明されており、公式サイトの技術ページ自体が分かれています。
⑤窓は木造でも樹脂とは限らない
断熱材と並んで効いてくるのが窓です。家の中で最も熱が出入りする場所ですから、ここの仕様は見ておきたいところ。
- 一条工務店
- 自社開発の「防犯ツインLow-Eトリプル樹脂サッシ」。一般的なペアガラスアルミサッシと比べて約6倍の断熱性能と説明されています
- 三井ホーム
- アルミクラッド樹脂サッシに、アルゴンガス入りの高遮熱Low-Eガラス。自社の木製トリプルガラスサッシと同等の断熱性能とされ、さらに断熱性能の高い樹脂サッシも用意されています
- 住友林業
- アルゴンガス入りLow-E複層ガラス。1枚ガラスに比べて熱の伝わりを約80%低減すると説明されています
- 積水ハウス シャーウッド
- 「超高断熱アルミ樹脂複合サッシ(SAJサッシ)」を標準採用(一部サッシを除く)。一般のアルミ樹脂複合サッシの約1.4倍の断熱性能とされています
ここが個人的にいちばん意外だった部分です。木造だから全社が樹脂サッシ、というわけではありませんでした。三井ホームと積水ハウスは樹脂だけで構成されたサッシを標準としているわけではなく、それでも断熱等級6の水準に対応しています。
なお我が家のヘーベルハウスはLIXILのTWですが、これは公式サイトでは確認できず、営業担当に聞いて分かりました。積水ハウスがSAJサッシという製品名を公式に出しているのとは対照的です。窓は公式情報だけでは仕様が分からない場合もあるため、製品名まで確認しておくと比較しやすくなります。
⑥気密(C値)で4社は分かれる
ここが今回いちばん差が出た項目です。
一条工務店は公式サイトで、C値の平均実測値0.59平方センチメートル毎平方メートルを公表しています。45坪の家なら、隙間を集めてもハガキ約0.6枚分という説明付きです。さらに、他社では任意実施の場合も多い気密測定をすべての家で行い、自社基準をクリアしたことを確認したうえで引き渡すことまで明記されています。
一方、他の3社はどうか。気密について何も語っていないわけではありません。
- 三井ホーム
- 密閉度が高い構法によって外気温の影響を受けにくくすると説明している
- 住友林業
- BF構法は筋かいなどの斜材が入らないため、上から下まで切れ目なく断熱材を充填できると図解付きで説明。独自のフィルム付き断熱材で隙間なく施工するとしている
- 積水ハウス シャーウッド
- 高断熱とは断熱材を厚くすることだけではなく、換気や隙間風で失う熱を減らすことでもあるとして、断熱・気密・遮熱・換気をまとめて高める考え方を掲げている
ただ、C値の具体的な数値も、全棟で気密測定を行うという記載も、公式サイトでは確認できませんでした。
ここから言えるのは、木造という構造だけでは気密性能は決まらないということ。そのうえで会社によって、気密を数値と測定まで含めて商品の性能として示すか、断熱材や施工方法の説明を中心に語るかが分かれている、と読むのが公式情報から言える範囲だと思います。

公表値がない会社で建てるならどうするか
これは他人事ではなく、まさに我が家の話です。ヘーベルハウスもC値を公表していません。
私の担当だった営業さんは、断熱・気密が自社の得意分野とは言えないことを、面談の場ではっきり認めていました。そのうえで、気密施工に詳しい人を紹介してくれました。
そこで私は、契約の条件として気密測定を行ってもらうことを伝えました。実際には断熱工事が終わった段階での中間測定を1回、ヘーベルハウス立ち会いのもと第三者検査機関に実施してもらい、費用は15万円でした。
結果の数値は、構造プランや施工によって変わりやすいため公表を控えてほしいという説明を受けているので、この記事でも書きません。ただ、一般的に高気密と言われる水準には入っているものの、C値0.5以下を売りにする超高気密メーカーと張り合える数字ではない、というのが正直なところです。
大事なのは、公表値がないことと、測ってもらえないことは別だという点です。測定してくれるのか、いつ、何回測るのか、費用は誰が負担するのか。ここは契約前に聞けば答えが返ってきます。測定当日の様子は別記事にまとめました。
補足:断熱・気密は空調とセットで考える
断熱・気密は、空調や換気とセットで考える必要があります。三井ホームは全館空調「スマートブリーズ」、一条工務店は全館床暖房と熱交換換気「ロスガード90」を組み合わせる構成です。我が家も家じゅうの温度差を抑えるため全館空調を採用しました。実際の夏の電気代は別記事で検証しています。
⑦各社は断熱・気密をどう説明したか
ここからは、実際に面談したときの話です。数年前の記憶に基づくもので、担当者による違いも大きいはずですから、あくまで一例として読んでください。それでも、各社が断熱・気密をどの位置に置いているかは、公式サイトの見せ方とかなり重なっていました。
- 一条工務店
- 他社との比較資料まで用意して、断熱・気密をかなり強く推してきました。数字で語る会社という印象がそのまま出ていた形です。公式サイトでC値と全棟測定まで公開している姿勢と、説明の仕方が一致していました。
- 三井ホーム
- モノコック構造は断熱・気密を取りやすく、そこに全館空調を組み合わせることで快適さを実現している、という説明でした。断熱単体ではなく、空調とセットで快適性を語るスタイルです。
- 住友林業
- 断熱・気密については「そこそこ」という言い方で、それよりもトータルでの住み心地を追求するという雰囲気でした。日射や風の入り方を設計で活かす、いわゆるパッシブデザイン寄りの考え方です。
- 積水ハウス
- 住友林業と同じ方向でした。断熱・気密に力を入れている印象はなく、土地に合わせて軒を出すなど、間取りと外観の工夫で快適さを作るという話が中心です。大開口と断熱性能の両立を掲げる公式サイトの説明とも、方向性は揃っています。
数値を前面に出す会社、設計と合わせて語る会社
最近はどのメーカーも「住宅性能」と「設計自由度」のどちらも打ち出しています。住友林業は全地域での等級6対応を明示していますし、積水ハウスもSAJサッシの性能を数字で説明しています。違うのは何を前面に出して説明するかであって、どちらかしかやっていない会社はありませんでした。
断熱・気密の数値と、開口や日射、間取りによる工夫は、どちらも快適性のための手段です。我が家でも日照シミュレーションを使って、西日の強い窓を減らしたり、アウターシェードや軒で日射を調整したりしました。だからこの記事では順位をつけません。性能の数値と設計の両方を見る。そのうえで、各社がどこまで数字を開示しているかは分けて考えるのが、この4社を比較するときのポイントだと思います。
⑧比較するときに営業へ聞くこと
最後に、この記事の内容を自分の家づくりに落とし込むための質問リストをまとめます。展示場や打ち合わせでそのまま使えるはずです。
- その数値は、どの商品・どの工法のものですか
- 私たちのプランで計算したUA値はいくつになりますか
- 断熱材の種類と厚みは、壁・天井・床それぞれいくつですか
- 窓のサッシは何という製品で、ガラスの構成はどうなっていますか
- 気密測定はしてもらえますか。時期と回数、費用はどうなりますか
- 等級の但し書き(地域区分・仕様・プラン)に、私たちの計画は当てはまりませんか
この6つは、複数社に同じ質問をするほど違いが見えやすくなります。ただ、展示場を1社ずつ回って同じ質問を繰り返すのは、正直かなり大変です。私も最初は展示場を回っていましたが、途中から間取りの提案をまとめて受け取れるサービスを使い、残りの会社とはオンラインで面談しました。
移動時間がかからないぶん、同じ質問を各社にぶつけて回答を並べるという作業がやりやすくなります。
複数社の間取りと仕様を まとめて比較
実際に使ってみた流れと、届いたプランの中身は別記事に詳しく書いています。
まとめ|木造の中にも違いがある
木造4社の断熱・気密を公式情報だけで並べ直して見えてきたのは、次のことでした。
- 木造という構造だけでは、断熱・気密の性能は決まらない
- 気密については、数値や全棟測定まで公表する会社と、施工方法を中心に説明する会社とで、情報の出し方が違う
- 断熱・気密の数値だけでなく、窓や日射、間取りまで含めて快適性を見る必要がある
- 断熱等級の「標準」「対応」は、地域やプランなどの条件まで確認する必要がある
- 比較できるのは公表の仕方まで。自分の家の性能は、自分のプランで確認するしかない
鉄骨メーカー6社の断熱・気密については別記事でまとめています。鉄骨と木造で迷っている方は、あわせて読んでいただけると全体像がつかめるはずです。
本記事の各社仕様は、各社の公式サイトおよびプレスリリースの記載(2026年8月時点)に基づいており、仕様は変更される場合がありますので、内容に誤りがあればお問い合わせフォームよりご連絡ください。
