鉄骨ハウスメーカー6社の構造を比較|ヘーベル施主が公式情報で検証

鉄骨ハウスメーカー6社の構造を比較|ヘーベル施主が公式情報で検証

はじめに|「鉄骨ならどこも同じ」ではない

ハウスメーカーを鉄骨で絞り込むと、ヘーベルハウス・積水ハウス・大和ハウス・トヨタホーム・パナソニックホームズ・セキスイハイムあたりが候補に挙がってきます。

このとき、つい「どこも鉄骨なんだから、構造は似たようなものでしょ」と考えてしまいがちです。でも、実はここが大きな落とし穴でした。同じ「鉄骨造」でも、使う鋼材も、地震への耐え方も、間取りの自由度も、メーカーによって、そして同じメーカーの中でも商品によってはっきり違いがあります

この違いを知らずに見た目や価格だけで決めると、後から「思っていた構造と違った」となりかねません。

この記事では、実際にヘーベルハウスで二世帯住宅を建てた施主の視点から、鉄骨住宅を検討すると候補に入りやすい6社の構造を比較します。

読者の多くが検討される平屋・2階建てを主軸に置き、3階建て以上は主な違いに絞って紹介します。

なお、この記事に出てくる構法名・部材寸法・実験条件は、すべて各社の公式サイトと公式ニュースリリースで確認できる内容に絞りました。各セクションの末尾に出典を置いてあります。ただし公式の数値は特定条件下のものが多く、時期やプランでも変わるため、最終的にはご自身の打ち合わせで確認してください。

軽量鉄骨と重量鉄骨は何が違うのか

各社の比較に入る前に、鉄骨造の基礎を押さえておきます。ここが分かると、比較が一気に理解しやすくなります。

境目は鋼材の厚み6mm

軽量鉄骨と重量鉄骨を分けるのは、鋼材の厚みです。一般的に、厚み6mm未満が軽量鉄骨6mm以上が重量鉄骨と呼ばれます。

一般に、鋼材が厚く断面が大きいほど大きな力を負担しやすくなります。ただし建物全体の強さは厚みだけでは決まらず、部材の形状や接合方法、フレーム全体の設計が関わってきます。「厚い方が強い」と単純に置き換えられる話ではない、という点だけ先に押さえておいてください。

ラーメン構造とブレース構造

もう一つ、構造を理解するうえで大事になるのが、代表的なラーメン構造とブレース構造の違いです。これが間取りの自由度に直結してきます。

ラーメン構造とブレース構造の違い

ラーメン構造は、柱と梁をがっちり接合し、柱と梁だけで地震の力に耐える方式です。斜めのブレース(筋交い)が要らないため、柱の間隔を広く取れて、大空間や大きな開口部を作りやすいという特徴があります。

ブレース構造は、その名の通り柱と梁に加えて斜めのブレース(筋交い)を配置し、そのブレースにも地震時の水平力を負担させる方式です。このブレースの位置によって、窓や間取りに制限が出る場合があります。

軽量鉄骨でも大空間はつくれる

ここでひとつ注意点があります。「重量鉄骨だからラーメン構造、軽量鉄骨だからブレース構造」と単純に対応しているわけではありません。

たとえばトヨタホームのシンセは、ユニットの柱と梁を剛接合した鉄骨ラーメン構造です。ヘーベルハウスのハイパワード制震ALC構造には斜材を用いた制震フレームがありますが、同時に、通し柱を必要としない梁勝ち構法という構造を採用しています。斜材の有無と、柱・梁をどう納めるかは別の話だということです。

ですので、従来型の軽量鉄骨住宅を単純にイメージして「軽量鉄骨だから間取りの自由度が低い」と決めつけることはできません。「軽量か重量か」だけで判断せず、そこに「どう組んでいるか」を必ずセットで見てください。この2軸を持っておくと、各社の違いがくっきり見えてきます。

【早見表】鉄骨ハウスメーカー6社の構造比較

まず全体像をつかみたい方のために、6社の構造を先にまとめます。各社の詳しい特徴は、この後で順番に解説していきます。

メーカー平屋・2階建ての主な構造3階建て以上構造上の特徴
ヘーベルハウスハイパワード制震ALC(軽量)/
デュアルテックラーメン(重鉄)
重鉄・システムラーメン構造2階建てでも重量鉄骨を選べる。
商品ごとに構造が変わる
積水ハウスダイナミックフレーム・システム(軽量鉄骨)フレキシブルβシステム(重量鉄骨)高強度梁で大開口を実現し、シーカスで揺れを抑える
大和ハウスxevoΣ(軽量鉄骨)xevoM3(軽量)/skye3・skye(重量)耐力壁そのものが地震エネルギーを吸収する
トヨタホームシンセ(鉄骨ラーメンユニット)/
エスパシオ(鉄骨軸組)
エスパシオ系で対応ユニットと軸組を併用。
一部は他社構法をOEM導入
パナソニックホームズHS構法(制震鉄骨軸組)/
F構法(大型パネル)
NS構法(重量鉄骨ラーメン)座屈拘束技術を用いた制震ダンパーが軸
セキスイハイムボックスラーメン構造(鉄骨ユニット)デシオ(3階建て)高い工場生産率とボックスラーメン構造が特徴

※6社いずれも複数の構法を持つため、メーカー名だけで仕様は決まりません。プラン・地域・時期によっても変わります。

ヘーベルハウス|2階建てでも重量鉄骨を選べる

まずヘーベルハウスですが、ここが今回一番お伝えしたいポイントです。「重量鉄骨のメーカー」と思われがちですが、正確には商品によって軽量鉄骨にも重量鉄骨にもなります。

公式の構造ページでは、3つの構造が並列に紹介されています。順に見ていきましょう。

ハイパワード制震ALC構造|軽量鉄骨

ヘーベルハウス ハイパワード制震ALC構造の躯体。各階の壁に制震フレーム「ハイパワードクロス」が配置されている
画像引用元:旭化成ホームズ「構造・躯体」

画像を見ると、各階の壁の中に「×」状の部材が配置されているのが分かります。この部分が制震フレーム「ハイパワードクロス」です。高強度の柱と梁にこれを組み合わせた構造で、斜材と横材の組み合わせで座屈を抑えながら、ブレースの中央連結部にある極低降伏点鋼へ地震力を伝えて吸収する仕組みになっています。

公式が示す代表的な柱は80mm角で厚さ3.2mm、梁せいは250mm。一般に軽量鉄骨と呼ばれる範囲の部材です。ただしこれはあくまで「使用頻度の高い寸法」であり、商品・仕様・部位によって変わります。

あわせて公式サイトは、この構造について「通し柱を必要としない梁勝ち構法により、構造安全性と高い設計対応力を両立する」と説明しています。制震フレームに斜材を使いながら、柱・梁の納まりでは設計の自由度を確保する、という組み立て方です。

重鉄・システムラーメン構造|重量鉄骨

FREXシリーズなど、3・4階建てを中心に採用されている重量鉄骨の構造ですが、2階建ても可能です。大断面の柱と梁を特殊高力ボルトで強固に接合しています。

建築中の我が家のLDKを見ると、壁の中にブレースがなく、太い柱と梁だけで大空間を支えていることが分かります。

建築中のFREXのLDK。壁の中にブレースがなく、太い柱と梁だけで大空間を支えている
ブレースのないFREXの大空間(左奥が制震装置「サイレス」)

左奥に見えるのが、制震装置のオイルダンパー「サイレス(SeiRReS)」です。建物が揺れると鉄骨梁のスライドに合わせてピストンがストロークし、地震エネルギーを吸収します。大きな揺れだけでなく中地震にも反応する点が特徴で、公式では震度7相当の大地震を23回連続で加震し、すべての大地震で揺れを吸収することを確認したと説明されています。

重鉄制震・デュアルテックラーメン構造|重量鉄骨

ヘーベルハウス 重鉄制震・デュアルテックラーメン構造の躯体。1階に制震フレーム、2階に剛接合のラーメン構造
画像引用元:旭化成ホームズ「構造・躯体」

2022年に発表された、40〜60坪程度の2階建て邸宅向けの躯体です。RATIUSシリーズの構造基盤になっており、150mm角の鉄骨柱を基本としています。重鉄・システムラーメン構造と制震技術を、2階建ての市場へ展開したものという位置づけです。

画像を見ると、1階部分には制震フレームがあるのに対し、2階部分は柱と梁を剛接合したラーメン構造となっていることが分かります。

制震は3つの技術を組み合わせ、柱・梁・基礎にかかる力を抑えながら地震エネルギーを吸収します(アダプティブジョイント、極低降伏点鋼、フレキシブルジョイント)。実大振動実験では、過去に起きた巨大地震8波と今後予想される巨大地震4波が検証されています。

整理すると、「ヘーベルハウスは軽量鉄骨か重量鉄骨か」という問いへの正確な答えは「商品による」です。「ヘーベル=重量鉄骨」という思い込みは、ここで一度リセットしておくのがおすすめです。

  • 平屋・2階建て:ハイパワード制震ALC構造(軽量鉄骨)/重鉄制震・デュアルテックラーメン構造(重量鉄骨)
  • 3階建て以上:重鉄・システムラーメン構造(重量鉄骨)
  • 耐震・制震の考え方:構造ごとに制震の仕組みが異なる(ハイパワードクロス/3技術の組み合わせ/サイレス)
  • 検討するなら確認したいこと:提案されている商品がどの構造か。公式の耐震ページに等級の記載はないため、耐震等級は個別に確認する(我が家は性能表示計算による耐震等級3)

出典:ヘーベルハウス 構造・躯体旭化成ホームズ 2022年4月26日リリース

我が家がFREXを選んだ理由

ここからは我が家の話です。RATIUSの方がFREXよりコストを抑えられることもあり、営業担当にRATIUSでも可能かどうかを確認したのですが、最終的にはFREXを選びました。決め手は2つです。

前の家のブレースがリフォームの壁になった

今の家は妻の実家を建て替えたものですが、以前の家はヘーベルハウスの軽量鉄骨でした。

検討当初は建て替えだけでなくリフォームも選択肢に上がっていたのですが、ここでネックになったのがブレース(筋交い)だったのです。

以前の家はリビングとダイニングの間の壁にブレースが入っており、2つを繋げて広いLDKにしようとしても、これが邪魔をして間取りに制限が出てしまいました。この経験があったので、将来また手を入れる可能性を考えると、筋交いのいらないラーメン構造で建てたいという気持ちが強くありました。

想定坪数がFREXの方が適していた

もう一つは規模の問題です。RATIUSは公式リリースでも40〜60坪程度の2階建て邸宅向けとされていますが、我が家が検討していた間取りはこのレンジを超えていました。

具体的にRATIUSで図面を書いてもらって比較したわけではないものの、営業担当からは「今ご検討中のサイズ感ですと、FREXの方がより自由度が高くなる可能性があります」という言葉もあり、設計の自由度を優先しました。

ここでお伝えしたいのは、FREXが優れているという話ではありません。同じメーカーの中ですら、想定する規模によって適した構造が変わるということです。だからこそ、商品名まで踏み込んで確認する意味があります。

積水ハウス|低層と多層階で構造を使い分ける

積水ハウスは現在、公式サイトが商品名ではなく「鉄骨1・2階建て」「鉄骨3・4階建て」という構法区分で案内されています。比較するときも、この区分に沿って見ると整理しやすくなります。

鉄骨1・2階建ての中核は、軽量鉄骨の「ダイナミックフレーム・システム」です。高強度梁「ダイナミックビーム」とフレーム構成により、最大スパン7,000mm、1階天井高2,700mmという大開口・大空間を実現しています。

積水ハウス ダイナミックフレーム・システムの構造。1階に制震システム「シーカス」が組み込まれている
画像引用元:積水ハウス ダイナミックフレーム・システム

これと組み合わせて使われるのが、粘弾性の制震システム「シーカス」。写真で言うと、1階の斜材が少し太くなっている「くの字」の部分です。

地震動のエネルギーを熱へ変換する仕組みで、公式では同社の耐震構造と比べて建物の変形量を1/2以下に抑えるとしています。あくまで自社比較である点は押さえておきましょう。

3・4階建ては重量鉄骨の「フレキシブルβシステム」。通し柱を必要としない梁勝ちラーメン構造で、各階で柱の位置を動かせます。

なお、公式が使う「高さ60mの高層ビルと同じ耐震基準で設計」という表現は、構造計算の基準についての説明です。住宅の耐震性能が高層ビルと同等になるという意味ではないので、ここは読み違えないようにしてください。

  • 平屋・2階建て:ダイナミックフレーム・システム(軽量鉄骨)
  • 3階建て以上:フレキシブルβシステム(重量鉄骨)
  • 耐震・制震の考え方:粘弾性ダンパー「シーカス」を組み合わせる。変形量1/2以下は自社の耐震構造との比較
  • 検討するなら確認したいこと:耐震等級の対応基準が構法別・地域別に分かれているため、自分の建築地でどうなるか

出典:積水ハウス 鉄骨1・2階建て鉄骨3・4階建て

大和ハウス|商品と階数で構法が細かく分かれる

大和ハウスは、6社の中でも商品と構造の対応が細かく分かれているメーカーです。「大和ハウスの鉄骨」とひとまとめにすると、かえって実態が見えなくなります。

平屋・2階建ての主力は、軽量鉄骨の「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」。エネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST」を標準搭載しています。

大和ハウス xevoΣのエネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST」。Σ形のデバイスが組み込まれている
画像引用元:大和ハウス 高耐震 テクノロジー

片筋かい形状の耐力壁で、強い揺れの際にΣ形デバイスが上下にしなやかに動いて地震エネルギーを吸収する「持続型耐震構造」を構成します。写真を見ると、本当にΣ形になっているのがよく分かりますね。
制震装置を後から足すのではなく、耐力壁そのものがエネルギーを吸収するという考え方です。天井高2m72cmの大空間も、この構造が支えています。

公式では、防災科学技術研究所のE-ディフェンスで実物大のxevoΣを加震し、175kine(震度7相当)を4回連続で加えても柱・梁に損傷がなく新築時の耐震性能を維持したと説明されています(2013年9月実施)。上位仕様ではΣ形デバイスを2か所に配置した「KyureK」も用意されており、揺れを最大1/2に低減するとされますが、これは指定条件による試算値で、全プラン共通の数字ではありません。

3階建て以上になると、軽量鉄骨ブレース構造の「xevoM3」と、重量鉄骨ラーメン構造の「skye3」「skye」に分かれます。ここで見落としやすいのが保証の違いで、多くの商品が構造・防水の初期保証30年であるのに対し、xevoM3だけは初期20年です。構造だけでなく保証条件まで並べて比べてください。

  • 平屋・2階建て:xevoΣ(軽量鉄骨)
  • 3階建て以上:xevoM3(軽量鉄骨)/skye3・skye(重量鉄骨)
  • 耐震・制震の考え方:耐力壁D-NΣQSTそのものが地震エネルギーを吸収する
  • 検討するなら確認したいこと:商品によって構法も初期保証年数も変わる。3階建てでxevoM3を提案されたら保証条件を必ず確認する

出典:大和ハウス xevoΣ 高耐震AQサポート

トヨタホーム|ユニット工法だけではない

トヨタホームは少し毛色が違います。よく「トヨタホームはユニット工法」と紹介されますが、これは正確ではありません。系統が3つあります。

1つ目が主力の「シンセ」。柱と梁を剛接合した「鉄骨ラーメン構造ユニット」(下図左上)を工場で生産し、現場で据え付ける工法です。強靭な構造体は「パワースケルトン」と呼ばれ、柱は125mm角。柱梁接合部には変形防止プレート「ダイアフラム」が内蔵されており、接合部の変形を抑えて剛性を確保します。構造体の高い剛性を基本に地震へ耐える考え方です。

トヨタホーム シンセの鉄骨ラーメン構造ユニット「パワースケルトン」
画像引用元:トヨタホーム 構造体

ユニットの連結部を強靭な梁で補強することで、最大35畳の柱のない空間を作れるようにもなっています。

なお公式では、住まい全体の約85%を工場で生産するとしています。ただしこの85%はシンセについての説明であり、トヨタホームの全商品に当てはまるものではありません。基礎・据付・接続・仕上げなどの現場工程も当然残ります。

ユニット工法は決まった位置に柱が入るため、本来は間取りに制約が出やすい方式です。トヨタホームはユニットの種類を増やしたり、建物の外形を0.25m単位で調整できる技術を導入したりして、この制約を段階的に緩めてきました。

2つ目が「エスパシオ」。こちらはユニットではなく鉄骨軸組で、都市型の自由設計を担ってきた系統です。EST工法と呼ばれ、ラチス柱と梁せい250mmの梁を組み合わせます。

そして3つ目が、2025年10月に首都圏で発売された「ESPACiO GT」です。ここが6社の中でもかなり異例な話になります。

GTは従来のEST工法を改良したものではなく、パナソニックホームズの制震鉄骨軸組構造(HS構法)をOEM導入する形でフルモデルチェンジしたと公式に明記されています。つまりGTの制震機構は、トヨタホームの自社開発ではありません。

なお耐震等級について、トヨタホームはシンセ・エスパシオの両系列で標準仕様の耐震等級3を公式に案内しています。ただし商品・プラン・地域により異なる場合があるとされているので、全棟が等級3と読み替えないようにしてください。

  • 平屋・2階建て:シンセ(鉄骨ラーメンユニット)/エスパシオ(鉄骨軸組)
  • 3階建て以上:エスパシオ系で対応
  • 耐震・制震の考え方:シンセは構造体の剛性を中心に耐える。ESPACiO GTはHS構法をOEM導入した制震構造
  • 検討するなら確認したいこと:提案がユニットか軸組か。耐震等級3は標準として案内されているが、商品・プラン・地域で異なる場合がある

出典:トヨタホーム シンセ構造技術2025年10月17日リリース(ESPACiO GT)

パナソニックホームズ|制震軸組・大型パネル・重量鉄骨の3構法

パナソニックホームズは、低層と多層階で構法をはっきり分けています。

低層の自由設計を担うのが「HS構法」。15cmモジュールを採用し、耐力壁「アタックフレーム」と制震ダンパー「アタックダンパー」を組み合わせます。アタックダンパーは、超高層ビルに採用される座屈拘束技術をダウンサイジングしたもの。一般的なブレース材が引張力を受けたときだけ耐力を発揮するのに対し、引張と圧縮の両方で耐力を発揮する点が公式の訴求ポイントです。

パナソニックホームズ HS構法の耐力壁「アタックフレーム」と制震ダンパー「アタックダンパー」
画像引用元:パナソニックホームズ 制震鉄骨軸組構造(HS構法)

ただし注意点が2つあります。
1つは、アタックフレームにダンパーあり・なしの2種類があり、構造計算に基づいて配置されるため、すべての耐力壁にダンパーが入るわけではないこと。

もう1つが、よく引用される数字の読み方です。
「震度7を200回」という記載がありますが、住宅全体を200回加震した実験結果ではありません。耐力壁が吸収したエネルギー量から算出された換算値です。数字のインパクトが大きいぶん、条件まで含めて理解しておきたいところです。

このほか、大型パネルによる面構造で地震力を受け止める「F構法」と、3〜9階建てに対応する重量鉄骨ラーメン構造の「NS構法」があります。同じカサートという商品名でも時期・商品によってHS系とF系があるため、商品名だけで構法を決めつけられない点は覚えておいてください。

  • 平屋・2階建て:HS構法(制震鉄骨軸組)/F構法(大型パネル)
  • 3階建て以上:NS構法(重量鉄骨ラーメン・3〜9階)
  • 耐震・制震の考え方:HS構法はアタックダンパーで制震。F構法は大型パネルの面構造、NS構法は重量鉄骨ラーメン構造
  • 検討するなら確認したいこと:同じ商品名でも構法が違う場合があるため、まず提案された構法を確認する。HS構法ならダンパーの配置も確認する

出典:パナソニックホームズ 制震鉄骨軸組構造 HS構法

セキスイハイム|工場生産を徹底した鉄骨ユニット

セキスイハイムの鉄骨系は、1971年から続く「ボックスラーメン構造」のユニット工法です。住宅をユニット単位に分割し、柱と梁を溶接して一体化したユニットを積み重ねていきます。

セキスイハイム ボックスラーメン構造の鉄骨ユニット
画像引用元:セキスイハイム TECHNOLOGY 01 強さの理由

公式が示す柱の寸法は100×100mmまたは120×120mm。重要な柱と梁はコンピュータ管理のスポット溶接で剛接合し、上下のユニットはハイテンションボルトで緊結します。基礎は建物を面全体で支えるベタ基礎が標準です。

工場での作りこみは6社の中でも際立っており、構造体の生産工程自動化率は86%(2023年度)。工程の大半を屋根のある工場内で行い、現場では約1日で雨仕舞まで完了するとしています。ただし建物規模や天候によっては1日で終わらない場合もあり、基礎・据付・仕上げは現場施工である点は変わりません。

耐震技術は「GAIASS」で、2025年のフラッグシップ・エルビアでは「GAIASS2.0」として展開されています。ここで公式が使う「建築基準法の2倍の耐震性」という表現は、比較対象が品確法の耐震等級1(倒壊等防止)である点に注意が必要です。等級2や等級3と比べて2倍という意味ではありません。

耐震等級については、6社の中で最も踏み込んで訴求しているのがセキスイハイムです。公式に「標準仕様で最高等級の耐震性能をクリアすることが可能」と記載し、図中でも等級3が建築基準法の1.5倍であることを明記しています。ただし「一部の特殊プランにおいては例外となることがあります」という注記もセットで書かれているので、そこまで含めて読みましょう。

  • 平屋・2階建て:ボックスラーメン構造(鉄骨ユニット)
  • 3階建て以上:デシオ
  • 耐震・制震の考え方:ユニット構造体の粘りと外壁の強度で受け止める(GAIASS)
  • 検討するなら確認したいこと:「基準法の2倍」は耐震等級1との比較。等級3は標準で可能とされるが、特殊プランは例外がある

出典:セキスイハイム 強さの理由:構造体こだわりの工場生産

6社を比較して分かった構造の違い

6社を並べてみると、いくつか面白いことが見えてきます。

  • 積水・大和は「2階建ては軽量鉄骨、3階建て以上は重量鉄骨」が基本
  • ヘーベルハウスは、2階建てでも重量鉄骨を選べる
  • トヨタホームとセキスイハイムは、工場でユニットを作るという発想そのものが他4社と違う
  • 制震のアプローチが各社で別物。耐力壁自体に吸収させる大和、ダンパーを置く積水・ヘーベル・パナ、剛性で耐えるトヨタのシンセ、と考え方から異なる
  • トヨタホームのESPACiO GTのように、他社の構法をOEM導入するケースも出てきている

だからこそ、比較すべきは会社名ではなく商品名と構法です。相見積もりを取る際には、各社がどの商品・構法で提案しているかまで揃えて確認する必要があります。

公式情報だけでは比較できない3項目

ここまでの内容は、すべて各社の公式サイトと公式リリースで確認できることです。裏を返すと、公式情報をいくら読み込んでも埋まらないことが3つあります。

この記事で一番お伝えしたいのは、実はここかもしれません。

①坪単価

今回確認した公式情報の範囲では、6社いずれも商品別の平均価格や標準坪単価を公開していませんでした。ネット上に出回る坪単価はあくまで第三者の推定で、しかも本体価格に何が含まれるかは会社ごとに違います。付帯工事、外構、太陽光、設備、値引きまで含めた総額でなければ、そもそも比較になりません。

②C値(気密性能)

今回確認した公式Web情報の範囲では、6社とも全棟共通のC値や目標C値、全棟気密測定制度を確認できませんでした。

ただここで大事なのは、非公表イコール必ずしも性能が低い、ではないということ。単に主要な訴求指標にしていないだけです。気になる方は測定を実施するか、目標値はいくつか、未達だったときにどう対応するかまで、営業担当に直接聞いてみてください。

我が家では気密性にもこだわりたかったため、契約前に気密測定の実施を約束していました。

③自分の間取りでの耐震等級

これは意外に思われるかもしれません。第三者サイトには「大手はどこも耐震等級3が標準」と書かれがちですが、公式サイトを一社ずつ確認すると、状況はかなり違いました。

  • 執筆時点で確認した公式Webページの範囲では、耐震等級3を標準仕様として明示していたのは、セキスイハイムとトヨタホームの2社でした
  • 積水ハウスは、構法別・地域別の対応基準を公開(等級の数値は画像を開いて確認する必要あり)
  • 大和ハウス・パナソニックホームズ・ヘーベルハウスは、耐震ページに等級の記載が見当たらず、独自の実験条件で耐震性能を訴求している

誤解のないように補足すると、これは残り4社の耐震性が劣るという話ではまったくありません。実際に我が家では耐震等級3を取得しています。

我が家の設計住宅性能評価書に記載された耐震等級3
我が家の設計住宅性能評価書 耐震等級の抜粋

また「公式Webで確認できなかった」ことと「標準ではない」ことも別です。カタログやモデルプランの性能表示まで見れば、記載がある場合もあります。「何で語るか」というスタイルが会社ごとに違う、というのがここでの結論です。

ただ、等級で横並びに比較したいなら、カタログや設計住宅性能評価書、あるいは営業担当に確認するしかない、ということになります。

坪単価、気密、耐震等級の3つは、実際の見積書・仕様書・性能評価書、そして必要に応じた実測で確認するしかありません。

複数社の資料を同じ条件で取り寄せておくと、この3項目を確かめる作業がまとめて片付きます。

構造の違いは暮らしにどう影響するか

では、この構造の違いは実際の暮らしにどう関わってくるのでしょうか。設計を進めるうえで一番効いてくるのは、間取りの自由度です。

ラーメン構造は筋交いが要らないぶん、柱の少ない大きなLDKや、壁一面の大開口を作りやすくなります。開放感のあるリビングや大きな窓からの眺めを重視するなら、この自由度が効いてきます。

我が家もFREXの重鉄ラーメン構造で、柱の少ない広いLDKと大きな窓を実現しました。実際に暮らしてみると、壁の面積が少なく窓が大きいぶん、外の緑や空とゆるやかにつながって、実際の広さ以上の開放感があります。二世帯6人が同じ空間にいても窮屈さがなく、それぞれが思い思いに過ごせるのは、この広さのおかげだと感じています。

重鉄ラーメン構造で実現した、柱の少ない広いLDKと大開口
重鉄ラーメン構造だからできた、壁面のほとんどを窓にしたLDK

ただ、正直なところ「重量鉄骨だからすごい」という話ではありません。今は木造でも大空間を実現できるハウスメーカーが増えていますし、鉄骨の中でも、ブレース構造なら不自由というほど単純ではないからです。各社とも独自の技術で大空間を実現していますし、ヘーベルハウスの軽量鉄骨のように、制震フレームに斜材を使いながら、通し柱を必要としない梁勝ち構法で設計対応力を確保している例もあります。

とはいえ窓や開口部の位置に一定の制約が出ることはあるので、こだわりの間取りがあるなら、初期の段階で「希望する間取りを実現できるか」「どんな制約が出る可能性があるか」を確認しておくと安心です。

ユニット工法のトヨタホームとセキスイハイムは、工場生産による品質の安定と工期の短さが魅力になります。その反面、ユニットの寸法や搬入条件による制約は残るので、敷地の前面道路やクレーンの作業スペースまで含めて確認したいところです。

そしてもう一つ、見落とされがちなのが将来のリフォームです。動かせない壁がどこにあるかは構造で決まります。新築時の間取りだけでなく、20年後に手を入れられる余地があるかどうかも、構造を選ぶ判断材料になります。

構造は、数値や仕様だけで語りきれるものではありません。突き詰めれば「どんな空間で、どんなふうに暮らしたいか」に行き着きます。大事なのは構造の格付けではなく、自分たちが求める空間に対してどの構造が近道になるか、という見方だと思います。

なお、構造と並んで暮らしを左右するのが断熱・気密の性能です。鉄骨は寒いのか、気密は弱いのか、という点については、実際に測定した結果を別記事にまとめました。あわせて読むと、鉄骨住宅の全体像がつかめるはずです。

比較するときに6社へ聞きたい質問

鉄骨住宅を比較するためのフローチャート。何を建てるかを特定する段階と、特定したうえで比較する段階の6ステップ

ここまで読んで「結局どこがいいの?」と思われたかもしれません。でも正直なところ、その答えは家族ごとに違います。代わりに、我が家が実際にやってみて効果があった方法をお伝えします。

それは、各社にまったく同じ質問をぶつけることです。同じ問いを投げると、答え方の違いにその会社の考え方が出ます。この記事の内容を踏まえるなら、聞くべきは次の6つです。

  • 商品の構造は、軽量鉄骨と重量鉄骨のどちらですか(構法名と商品名も)
  • 希望している間取りの場合、耐震等級はいくつになりますか
  • 気密測定は実施しますか。実施する場合、目標値と、未達だったときの対応を教えてください
  • 断熱等級6は標準ですか、オプションですか。我が家の建築地でも適用されますか
  • 構造・防水の初期保証は何年で、延長には何が必要ですか
  • この間取りで、将来リフォームするときに動かせない壁はどこですか

最後の質問は、ブレースで痛い目を見た我が家だからこそおすすめしたいものです。新築時には気にならなくても、20〜40年後に効いてくる可能性があります。

この質問をぶつけるには、まず複数社から間取りと見積もりをもらう必要があります。展示場を6社ぶん回るのは現実的ではないので、一括で取り寄せられるサービスを使うのが早いです。我が家も検討初期に利用しました。

希望条件を一度入力するだけで、無料で複数社から間取りプランと資金計画がまとめて届きます。しつこい営業を避けたい旨も備考欄に書けます。

実際に使ってみた流れと、届いた資料の中身は別記事にまとめています。

まとめ|メーカー名ではなく商品と構法で比較する

最後に、この記事を実際の比較に使うための手順としてまとめます。

  • 早見表で気になる会社を絞り込み、商品名と構法名まで聞き出す。メーカー名だけでは仕様が決まらない
  • 提案された商品が軽量鉄骨か重量鉄骨か、ラーメンかブレースかを確認する。「軽量だから不自由」とは限らない
  • 耐震等級は「大手だから標準で3」と決めつけず、自分の間取りでいくつになるかを聞く
  • 坪単価とC値は公式情報では埋まらないので、実際の見積書と仕様書で確認する
  • 将来のリフォームで動かせない壁がどこかを、契約前に図面で確認しておく

「鉄骨だからどこも同じ」ではなく、各社・各商品で構造の思想は明確に違います。まずはこの違いを知ったうえで、自分の家族が求める間取りや空間にどの構造が合うのかを考えていく。それが、後悔しない家選びの第一歩だと思います。

この記事の早見表と質問リストを手元に置いて、複数社に同じことを聞いてみてください。答え方の違いに、その会社の考え方がはっきり出るはずです。

鉄骨ハウスメーカーの比較は、今後、外壁・断熱・保証など切り口ごとに記事を追加していく予定です。